7. 8分の6拍子のお話し

ヨーロッパの音楽の何割かを占めて、でも日本の曲にはあまり登場せず苦手な拍子の8分の6拍子についてちょっとお話しましょう。左の楽譜はマイフェアレディの終盤でヒギンズ博士が歌う行進曲風のものです。この拍子は1拍の単位が付点4分音符(八分音符が3つ)でそれがふたまとまりで1小節をなしているので見慣れた4拍子系統のものとは異なりますから演奏する人は必ず疑問に感じながらなおかつなんとなく演奏してしまうたぐいのものですが、実は拍子の成り立ちの一つの要因になんと馬の常足(なみあし)の隊列を成して行進する四足の足の運びがあるようです。ちなみに日本にだって馬はいるどころか騎馬軍団のお話だって数を上げたらきりはないのですが、西洋のものと違ってわが国ではお米を食べるので田を耕すのに馬を活用していたので麦の種を大地を駆け巡りながらばらまいていくヨーロッパの馬とは全く異なる種で背も低くて隊列を作り行進するのには不向きなのです。話が飛んでしまいましたが、というわけで例えば右後ろ足・右前足・左後ろ足・左前足と順番にゆっくりと「常足」で行進するときに8分の6拍子は大変理にかなった拍子なのです。

と言う訳で西洋のフレーズはこの拍子が大変多いのです。と同時に人間が隊列で行進するのが左足・右足と交互に運ばれる2拍子と一緒に混合されて行進曲の類や舞曲のステップに採用されているのです。

左の画像はウェストサイド物語の中の「アメリカ」の冒頭の部分ですが、バーンスタインはここで8分の6拍子と二段目のところで4分音符×3の3拍子の様に表現し、冒頭の拍子表示にカッコで4分の3拍子を書き加えています。実はさかのぼるところ16世紀ぐらいまでは曲を統一した拍子でということは少なかったようです。このような庶民の生活に根差した場面の描写には8分の6拍子が使われることが頻繁なのです。2拍子・4拍子系統の部分と混合しているものもありちょっと違う感覚で接してみると面白いですね。最後にショパンのバラードの三番は騎士が水の精に飲み込まれてしまうところまでを、

ミンケヴィッツの詩によってこの拍子で表現していますが、中世ではポーランド王国が馬の品種改良では一大産地だったようですよ。