6. 指使いのお話し(Fingering story)

ピアノを片手で五本の指、あわせて10本しかない指で気の遠くなりそうな数の楽譜を弾かなければならない私たちにとって指使いを会得することは大問題ですね。ピアノの奏法では

親指→1、人差し指→2、中指→3、薬指→4、小指→5

というように楽譜上では示されます。

左の楽譜はショパンの練習曲集を20世紀前半の大ピアニストであるコルトーが改訂して指番号が入っている楽譜ですが、普通皆さんが手にする楽譜は一般にこの指番号が改訂者によって入れられているものが大部分だと思いますが、じつは作曲者は指番号が入れられているものはあまり目にしないのです。ショパンも自筆の楽譜には練習曲集にも関わらず指番号は登場させていません。確かに目的を持ったフレーズには大事な指使いもあるでしょうが基本的には私たち自身がその時々のフレーズを自分の感性にあったものを考えることによって乗り越えなければ意味がなく思えるのですが、1950年代から盛んになった原典版(自筆譜や初版などの)の見直し運動でも楽譜の頭には指使いを書き入れた編集者の名前が入っています。

左の画像はベートーヴェンの4番のピアノ協奏曲の第一楽章のカデンツァですが、

指番号はありません。話は違いますが、モーツァルトはたくさんのピアノ協奏曲を書いていますがカデンツァを楽譜にすら示していないものが多いのです。

"On n'est jamis mieux servi que par soi -meme."

   Cherchons nos doigtes!    C.D.

これはドビュッシーが最後のピアノ曲となった練習曲集の巻頭にはっきりと「自分で見つけた指使いに勝るものはない。

良い指使いをみつけよう!」って書いたものです。

左の画像は私が30年以上も前にコンサートで練習曲集第1集を弾いたときに指使いを書き入れてみたものですが、練習する度に違うものが良くなって三つも同じところに書き入れています。どれを弾いたかは覚えていませんが。ちなみに「8本の指のために」という曲では親指はなるべく使わないようにとありましたが、

                              結局親指は使ったことを覚えています。